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上映に寄せて 伊藤高志
今回私の新作『零へ』がイメージフォーラム・フェスティバル2021で寺山修司賞を受賞し、斬新さと独創性において大変優れているという評価を得、高齢者ですが若者に負けてたまるかという気持ちでもっと頑張ろうと勇気が湧きました。なんと言っても「実験映画」や「個人映画」は学生時代の私を狂喜させた魅惑的世界ですが、その面白さを教えてくれたのが福岡の自主上映組織FMFでした。私の原点はここにあります。私は福岡の大学を出て東京の映画界で常識的な映画のあり方を叩き込まれるうちに、そうじゃないでしょ!という思いが強まり、退社し京都の芸術大学で映像を教える立場になりました。あれから29年間、学生たちに型を破ることを目指せ!非常識であれ!と言い続け、私もその思いを強く持ちながら作品作りを続けてきましたが、この春私は退官します。福岡に戻ってきたからにはFMFと共に実験的な表現をもう一度盛り上げたい、そんな思いを抱きながら『零へ』を上映します。
Profile
1956年福岡市生まれ。九州芸術工科大学在学中、松本俊夫ゼミで発表した実験映画『SPACY』('81)で一躍世界の注目を浴びる。超現実的な視覚世界や人間に潜む狂気や不条理を追求している。主な作品は『THUNDER』('82)、『ZONE』('96)、『静かな一日・完全版』('02)、『最後の天使』('14)、『三人の女』('16あいちトリエンナーレ出品/4面スクリーンによる映画インスタレーション/’20九州産業大学にて再演)など。また、'83年に劇作家如月小春とのコラボをきっかけに舞台空間における映像表現の可能性を追求。2000年代より舞台人やダンサーとのコラボで数々の実験的な舞台やインスタレーションを演出。山田せつ子との「Double」('01)は松本俊夫が絶賛。現在九州産業大学芸術学部教授。